
九州・沖縄というエリアは、日本地図を見ればひとつのブロックのように見えますが、実際に旅をしてみると、その景色や空気は県境を越えるたびにガラッと変わります。福岡の街並みに感じる都会の勢い、佐賀のゆったりとした時間の流れ、長崎の国際文化が混ざり合う港町の空気、熊本の雄大な山々の存在感、大分の温泉街に漂う湯けむり、宮崎の南国のような空気感、鹿児島の力強い食文化。そして沖縄は、それら九州の雰囲気とはまた違う、海に包まれた独自の文化圏が広がっています。こうした“空気の変化”は、料理にも驚くほど濃く反映されています。
また、九州は“旅のテンポが良い”という利点もあります。福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島を移動しても、県境間の距離が近く、旅程に無理が生まれにくい。少し足を延ばせば次の県、さらに進めば新しい味。過密になりすぎない絶妙な距離感が、自然と“食を中心に旅を組み立てたくなる地域”としての魅力につながっています。
今回の記事では、そんな九州・沖縄から「旅人がその土地らしさを自然に味わえる」10品を厳選しました。
《目 次》
- 九州・沖縄は“B級グルメの宝庫”
- 各地のおすすめB級グルメ10選
2-①博多(福岡県)|カリッと香ばしい名物串「博多とり皮」
2-②佐賀(佐賀県)|喫茶店文化が生んだ優しい丼「シシリアンライス」
2-③長崎(長崎県)|三つの味が一皿に詰まった洋食名物「トルコライス」
2-④熊本(熊本県)|黒マー油が香る力強い一杯「熊本ラーメン」
2-⑤別府(大分県)|湯上がりに軽く食べられる県民食「とり天」
2-⑥宮崎(宮崎県)|タルタルが主役の定番ご当地料理「チキン南蛮」
2-⑦鹿児島(鹿児島県)|脂が甘くとろける一枚「黒豚とんかつ」
2-⑧那覇(沖縄県)|スパイス×チーズ×レタスの絶妙な“温冷バランス”「タコライス」
2-⑨那覇(沖縄県)|朝にも旅の途中にも嬉しい“沖縄の定番”「ポークたまごおにぎり」
2-⑩久留米(福岡県)|豚骨文化の原点を味わう「久留米ラーメン」 - “ご当地B級グルメ”をもっと楽しむ旅のコツ
- 別府・大分グルメ旅の拠点に──源泉掛け流し『別府 豊泉荘』
- まとめ:九州・沖縄は“軽やかで奥深い”旅の宝庫
1. 九州・沖縄は“B級グルメの宝庫”
九州・沖縄の食文化は、難しい歴史を知らなくても、旅をして、街を歩いて、店に入り、料理を口にすればその理由が自然と伝わってきます。そんな『観光旅行者に優しい』風土が流れているこのエリアは、“B級グルメの宝庫”とも言われています。
このシリーズでは、地域ごとの特色が表れた“ご当地B級グルメ”に焦点を当て、味覚を通じて日本の多様な文化を紹介しています。是非、旅の参考にしてください。
では「なぜ、九州・沖縄エリアは“B級グルメの宝庫”」と言われているのでしょうか。
- “気軽に食べられる店”が多い:
九州の中心都市・福岡はもとより、大分や熊本、宮崎や鹿児島の主要駅や温泉街にも、観光者が自然に入れる店が非常に多く存在します。屋台、食堂、喫茶店、軽食屋――どの街も“入り口(敷居)の低さ”が大きな魅力で、それがB級グルメ文化を支える基盤になっています。 - 生活文化が料理に直結している:
観光地の「名物料理」ではなく、もともと地元の日常にある味がB級グルメとして認知されていることも大きな要因と言えます。とり天やシシリアンライスのように、家庭料理・喫茶店文化から生まれたものがそのまま観光客にも受け入れられるケースが多く、“日常と旅が交差する味”として成立しています。 - 素材が良いから料理がシンプルでも美味しい:
黒豚、鶏肉、魚介、野菜、果物――、九州・沖縄の食材は温暖な気候・地形・海の恵みにより、本来の味が強く、それがシンプルな調理でも高い満足度につながります。観光者にとっても分かりやすく“美味しい”料理に出会える確率が高く、旅のアクセントとして機能しやすいのです。 - 移動距離が短い → 食が次々変わる:
地方によっては、陸続きの距離が長い地域でもその間に同じ食文化が続くこともあります。しかし九州は違います。
少し移動すれば景色も、街の雰囲気も、料理も変わる。この“変化の連続”が食旅の高揚感を高めてくれるのです。
2. 各地のおすすめB級グルメ10選
<九州・沖縄エリアの人気ご当地B級グルメ10選>
- 博多(福岡県)|カリッと香ばしい名物串「博多とり皮」
- 佐賀(佐賀県)|喫茶店文化が生んだ優しい丼「シシリアンライス」
- 長崎(長崎県)|三つの味が一皿に詰まった洋食名物「トルコライス」
- 熊本(熊本県)|黒マー油が香る力強い一杯「熊本ラーメン」
- 別府(大分県)|湯上がりに軽く食べられる県民食「とり天」
- 宮崎(宮崎県)|タルタルが主役の定番ご当地料理「チキン南蛮」
- 鹿児島(鹿児島県)|脂が甘くとろける一枚「黒豚とんかつ」
- 那覇(沖縄県)|スパイス×チーズ×レタスの絶妙な“温冷バランス”「タコライス」
- 那覇(沖縄県)|朝にも旅の途中にも嬉しい“沖縄の定番”「ポークたまごおにぎり」
- 久留米(福岡県)|豚骨文化の原点を味わう「久留米ラーメン」
2-① 博多(福岡県)|カリッと香ばしい名物串「博多とり皮」

福岡の夜を語るうえで外せない存在が、屋台文化です。川沿いや街角に屋台が灯り始めると、福岡という街が“旅モード”に切り替わる。その雰囲気の中心にいる代表的な存在が“博多とり皮”。福岡のとり皮は、他県の焼き鳥屋で見かける“皮の串”とは別ジャンルと言っていいほど個性があります。
まず驚かされるのは食感です。外はカリッと、噛むとモチっと、さらに中心には皮特有の旨みがじゅわっと広がる。この絶妙な三段階のコントラストは、ただカリカリなだけの皮でも、柔らかいだけの皮でも生み出せません。手間を惜しまない福岡の焼き鳥文化がつくった“職人料理”なのです。

博多とり皮は、仕込みの段階で鶏皮を細長く巻き付け、ぎゅっと締めて串に通し、寝かせながら焼きを重ねていきます。数回焼いては休ませ、また焼く。この工程によって脂が落ち過ぎず、旨みだけが芯に残る状態になります。ひと口の満足度がとても高く、“つまみ”としても“主役”としても成立するのが特徴です。
屋台で食べると、その場の空気までもが味に乗ります。川沿いの風、屋台の提灯、周囲の笑い声、湯気の立ち上る鉄板。これは店内では味わえない、旅人だけの特権のようなものです。反対に、専門店では職人の所作がとにかく美しく、串打ち・焼きのリズムや、炭の上で皮が膨らむ瞬間など、“見て楽しむ料理”としての魅力が際立ちます。福岡の人たちに「最初に何を食べるべき?」と尋ねると、かなりの確率で返ってくるのがとり皮です。ラーメンよりも、もつ鍋よりも、まずはとり皮——。それくらい“最初の一口にふさわしい存在”。
旅の1日目、ホテルに荷物を置いて最初に向かうなら、ぜひ博多とり皮を味わってみてください。福岡という街の懐の広さ、楽しさが、串一本にぎゅっと凝縮されています。
2-② 佐賀(佐賀県)|喫茶店文化が生んだ優しい丼「シシリアンライス」

佐賀市の喫茶店文化が生んだ“シシリアンライス”。見た目はとても素朴で、派手さはありません。でも、食べれば分かる“落ち着く味の深さ”があり、旅の途中に食べる料理としてこれほど優秀なものはありません。
構成はシンプルです。温かいご飯に甘辛い牛肉をのせ、新鮮な生野菜を添え、最後にマヨネーズを回しかける。素材だけを聞くと、特別な要素はないように感じますが、この組み合わせが驚くほど調和します。牛肉の旨みとコク、野菜のシャキッとした食感、マヨネーズの酸味。これらが一口ごとに混ざり合い、舌の上でちょうどいい温度感になります。派手な味ではないのに“また食べたい”と思わせる、不思議な中毒性を持つ料理です。
シシリアンライスは、店ごとの個性がとても強いのも特徴です。甘めの牛肉で家庭料理のような優しさを出す店、スパイスを効かせて洋食寄りに仕上げる店、野菜を多めにしてヘルシーに感じさせる店。構成がシンプルだからこそ、細かな違いが印象を大きく変えます。
また、マヨネーズのかけ方ひとつでも印象が変わるのが面白く、少し控えめにして軽く仕上げたり、たっぷりかけてコクを足したりと、“食べる側の好み”で完成度が変わる幅の広い料理です。佐賀市はコンパクトな街で、観光ルートに自然に組み込めるのも魅力です。城下町の散策、博物館や歴史スポット巡り、商店街歩き――どの途中でも喫茶店が見つかり、ふらりと入れる間口の広さがあります。
食べたあとは、身体が重くならず、午後の観光にも影響しません。シシリアンライスは、旅のテンポを乱さず、むしろ整えてくれる“旅のバランス食”。派手さはなくとも、旅中の満足度をじわじわ引き上げてくれる一皿です。
2-③ 長崎(長崎県)|三つの味が一皿に詰まった洋食名物「トルコライス」

トルコライスは、一皿で三つの楽しみを味わえる“長崎らしさの象徴”です。ピラフ、パスタ、カツという王道トリオが同じ皿にのり、銀皿の上で堂々たる存在感を放ちます。初めて見た時は「豪華すぎる!」と思うかもしれませんが、食べるとその印象が良い意味で裏切られます。
それぞれの構成要素は重そうに見えますが、実際には“味の幅があるのにまとまりが良い”という、非常にバランスの取れた料理。ピラフはバター香る洋食系からスパイスの効いたタイプまで幅があり、パスタ部分はナポリタン、ミートソース、カレー風味など店によって違います。そしてカツは薄めで軽いタイプから厚めの存在感あるタイプまで様々。
つまり、“どの店で食べても違う顔を見せる”のがトルコライス最大の魅力。食べるたびに新しい発見があり、飽きるという感覚がほぼありません。

長崎という街との相性がとにかく抜群です。路面電車の音、歴史ある建物、坂道、港町の風。レトロで異国の雰囲気が混じり合うこの街で、銀皿のトルコライスを前にすると、“長崎に来た理由”が一気に輪郭を持ちはじめます。
洋食店や老舗喫茶店に入ると、店内は落ち着いた照明で、椅子やテーブルの古めかしささえ味の一部に感じられます。静かな空気の中で、ゆっくり食べるトルコライスは、旅の時間を濃く、豊かにしてくれる存在です。
また、トルコライスはボリュームがありながら、味の流れが軽やかです。ピラフの塩味、パスタの酸味またはコク、カツのサクッとした食感。それぞれが主張しすぎず、良い意味で“日常食と特別食の中間”のような絶妙なポジションです。旅の昼食に選んでも午後に響かず、夕食前の腹ごなしとしても成立する懐の深さがあります。
長崎を訪れたら、ぜひ一度は食べたい“旅を満たす一皿”。その日一日の思い出に、美味しさだけでなく“長崎という街そのもの”が加わります。
2-④ 熊本(熊本県)|黒マー油が香る力強い一杯「熊本ラーメン」
熊本ラーメンと言えば、何と言っても黒マー油の存在感。丼の表面に広がる黒い香味油は、熊本ラーメンにしかない“香りの主役”です。スープにレンゲを入れた瞬間、ニンニクの香りがふわっと立ち上がり、食欲を一気に掻き立てます。

見た目の濃厚さから「重そう」と思うかもしれませんが、実際に食べると驚くほど軽い。スープには深い旨みがありながら、後味はスッと消えるように心地よく、嫌な重さが残りません。マー油の香りが旨みを引き立てつつ、スープそのものはまろやかで、口の中に角が立たないように作られています。
麺は中太ストレート麺。食べ応えがありながらも重く感じません。噛むたびに小麦の風味が広がり、スープと程よく絡むため、レンゲと箸の往復が止まらなくなります。トッピングのチャーシューは店によって「厚切りで存在感を出すタイプ」「ほろほろと崩れる柔らかタイプ」など個性があり、食べる楽しさをさらに広げてくれます。
熊本市内には専門店が多く、観光動線とラーメン店の位置関係が抜群。熊本城散策後や商店街歩きの途中で自然に立ち寄れます。“旅の一杯”として理想的な立地条件がそろっているのです。
さらに熊本ラーメンが素晴らしいのは、“食べ比べが成立するジャンル”であること。味の方向性は共通していながら、店ごとの香り・麺の硬さ・マー油の量・チャーシューの厚みなどが大きく違います。2軒、3軒と食べ歩いても飽きるどころか、違いを楽しむほどに熊本ラーメンの奥深さが見えてきます。
“香りと軽やかさの絶妙なバランス”を堪能できる熊本ラーメンは、旅の途中で立ち寄っても、夜の締めとして選んでも満足度が高い一杯。熊本に来たら外せない存在です。
2-⑤ 別府(大分県)|湯上がりに軽く食べられる県民食「とり天」

大分の定番として紹介したいのが“とり天”。県民にとっては家庭料理としてもお馴染みで、観光客にとっては「軽いのに満たされる」万能グルメとして絶対的な人気を誇ります。
ポイントは衣の軽さです。ふわっと膨らむ衣は、油切れが良く、食べた瞬間にサクッと心地よい音を立てます。その直後に、下味の染み込んだ鶏肉の柔らかさが口いっぱいに広がり、優しい旨みに包まれます。揚げ物でありながら、食後に重さが残らない。これが“とり天の魔法”とも言える特徴です。
多くの店で提供されるのが“ポン酢+カラシ”の組み合わせ。ポン酢の爽やかな酸味と、カラシのキリッとした辛さが、とり天の軽さと見事にマッチします。特に湯上がりに食べると、身体の温まりとポン酢の爽快感が驚くほど相性が良く、別府では“温泉×とり天”がひとつの文化のようになっています。

大分市・別府市はとり天の名店が非常に多く、店ごとの個性がしっかり出ます。衣の厚さ、油の香り、鶏肉の切り方、下味の濃さ。小さな違いが積み重なることで、一つとして同じとり天はありません。観光スケジュールに組み込みやすいのも魅力で、駅近く、商店街、温泉街、どのエリアにも“気軽に入れる良店”があります。ランチでも良し、夕食前の軽食でも良し、テイクアウトで海辺に持っていっても良し。とり天は旅のシーンを選ばない万能選手です。
パンチがありながら軽く食べられる。親しみやすいのに奥が深い。大分グルメの中で“全方位的に強い一皿”として、旅の満足度を確実に支えてくれる存在です。
2-⑥ 宮崎(宮崎県)|タルタルが主役の定番ご当地料理「チキン南蛮」

宮崎のチキン南蛮は、日本中にファンがいる“和洋折衷の完成形”のような料理です。しかし、現地で食べると、そのイメージは一段階も二段階も更新されます。見た目はガッツリ系なのに、食べると軽やかで、旅の途中でも無理なく食べられる。宮崎の気候や土地の雰囲気とも不思議と調和していて、旅人が「宮崎に来てよかった」と感じる瞬間をつくってくれます。
チキン南蛮の構成は単純ですが、店ごとの“美味しさの鍵”となるポイントは意外にも多いのです。まず最初の違いは、鶏肉の厚みと下味。厚めに切って肉汁たっぷりに仕上げる店もあれば、薄くして衣の軽さを際立たせる店もあります。甘酢の浸け方も店の個性が出る部分で、しっかり浸けて酸味を効かせるタイプ、軽めに浸けて甘酢を隠し味にするタイプなどバリエーションは豊富。
そして何より主役となるタルタルソース。宮崎のチキン南蛮は、タルタルが店の“顔”と言われるほど重要となります。卵の刻み方、酸味の出し方、玉ねぎの量や食感、ピクルスの強さなど、タルタルだけで料理の印象が大きく変わるため、2軒目、3軒目と回っても飽きることがありません。観光地から少し離れたローカル食堂のタルタルが“旅で一番美味しかった”という声もよく聞きます。
宮崎は景勝地や神社など観光地が広域に広がっていますが、どのエリアにもチキン南蛮の名店が点在しており、旅の合間に自然と組み込みやすいのも魅力です。ドライブ途中のランチにもぴったりで、ボリュームはあるのに後半に重くならない。この“食べ応えと軽さの両立”が、多くの旅人を虜にしてきました。
宮崎に足を運んだなら、ぜひ現地のチキン南蛮文化を体感してほしい。そこには“誰が食べても好きになる仕組み”がしっかりと存在しています。
2-⑦ 鹿児島(鹿児島県)|脂が甘くとろける一枚「黒豚とんかつ」

鹿児島といえば黒豚。その黒豚の魅力を最も素直に感じられる料理が“黒豚とんかつ”です。東京などで黒豚と聞くと“高級感”を連想しがちですが、現地で食べる黒豚とんかつは驚くほど身近で、普段使いの料理として街に溶け込んでいます。
しかし、その味わいは一口目から圧倒的です。脂が甘い。とにかく甘い。肉の旨みと脂の甘みがクリアに口に広がっていきます。

鹿児島市内には数多くの黒豚料理店があり、どの店にも個性があります。
例えば、厚切りで“肉を噛む喜び”を前面に出す店。薄めに切って衣のサクサク感を楽しませる店。ミルフィーユ仕立てで層ごとに食感が変わる面白さを出す店。ヒレ中心で軽さを追求する店。
いずれも黒豚の持つ“脂の軽やかさ”を活かした仕上がりで、旅の途中でも食べやすいのが特徴です。
食べた瞬間に分かるのが、油の香りがクドくないこと。黒豚の脂は溶ける温度が比較的低く、舌の上でスッと溶けていくので、揚げ物でありながら重く感じません。鹿児島の人々が普段から食べている理由がわかります。「しっかり食べたいけど、午後に響かないものがいい」そんな旅の希望を叶えてくれるのが、この「黒豚とんかつ」。鹿児島の土地の強さを、そのまま一皿で味わえる贅沢な料理です。
2-⑧ 那覇(沖縄県)|スパイス×チーズ×レタスの絶妙な“温冷バランス”「タコライス」

タコライスは、沖縄に根付く“自由で大らかな食文化”を象徴する料理です。
スパイスの効いたタコミート、シャキッとしたレタス、マイルドなチーズ、そして温かいご飯。この組み合わせは一見ジャンクに見えますが、実際に食べると驚くほどバランスがよく、“軽いのに満足感の高い料理”であることが分かります。
沖縄では、タコライスを食べる場所によって印象が変わるのが面白いところです。観光地のカフェで食べれば、盛り付けやスパイスの調整が洗練されていて、おしゃれな一皿として成立します。反対に、地元客の多い食堂では“ご飯のお供”のような素朴さを味わえます。そして本場・金武町の老舗店では、タコス文化を背景にした“王道のタコライス”が楽しめます。
タコライス最大の魅力は、「暑い環境でも食べやすい」こと。
野菜の冷たさとご飯の温かさ、ミートの香りとチーズのコク。この“温冷ミックス”が沖縄の気候に驚くほど合います。食欲が落ちやすい昼下がりでもスッと食べられ、旅のリズムを取り戻してくれる優秀な存在です。
さらに、テイクアウト文化が強い沖縄では、タコライスはドライブ旅との相性が抜群。海辺のベンチで食べたり、車の中でサッと食べたり、ビーチの木陰で食べたり。どんなシーンでも美味しさが成立するのは、タコライスならではです。
沖縄という土地の“開放感”を一番ダイレクトに味わえる料理。それがタコライスです。
2-⑨ 那覇(沖縄県)|朝にも旅の途中にも嬉しい「ポークたまごおにぎり」

ポークたまごおにぎりは、沖縄の日常そのものです。スパムの塩気、ふんわり甘めの卵焼き、温かいご飯、香りの良い海苔。このシンプルな組み合わせだけで、しっかりした満足感が得られます。派手さはありませんが、沖縄が旅人を迎え入れてくれる“優しい味”が詰まっています。
沖縄では朝の空港や商店街の惣菜コーナーで当たり前のように並び、旅人にとっては「旅の最初に食べるもの」として非常に優秀です。早朝フライトで那覇に着いた瞬間に買ってその場で食べる、という楽しみ方をする人も多く、旅の序章を飾る料理として親しまれています。
また、ポークたまごおにぎりは“シンプルだからこそ店ごとの差が大きい”のも特徴です。
- 卵焼きを厚めにしてふんわり仕上げる店
- スパムをカリッと焼いて香ばしくする店
- ご飯に軽くバター風味を足す店
- 海苔の巻き方や厚さで食感を変える店
少しの変化で印象がガラッと変わるため、何度食べても飽きません。旅との相性は抜群で、持ち運びしやすく、ビーチ・公園・街歩きなどどんな場面でも“食べる場所が旅の思い出になる”料理です。
沖縄を訪れたら、まずはこの一品を食べて、土地の空気を体に取り入れてみてください。
2-⑩ 久留米(福岡県)|豚骨文化の原点を味わう「久留米ラーメン」

久留米ラーメンは“豚骨ラーメン文化の源流”と言われていますが、その味わいはとても優しく、どこか懐かしさがあります。見た目の濃厚さに反して、スープは丸みがあり、コクが深いのにしつこくない。香りはしっかりしているのに、飲み進めるほど軽やかに感じられる。このギャップこそ、久留米ラーメンの魅力です。
麺は細すぎず太すぎず、ちょうど良い存在感。噛むたびにしっかりと小麦の味が広がり、スープとの相性が抜群です。チャーシューは店ごとに個性があり、ホロホロ系だったり、薄切りで食べやすかったり。紅ショウガやゴマなどの薬味が、さらに味の幅を広げてくれます。
久留米の街はラーメン文化がとても強く、専門店が多いエリアとしても知られています。博多からのアクセスも良く、旅の途中で“わざわざ久留米に寄って食べる”という人が後を絶ちません。食べ比べが成立するジャンルで、店ごとの違いを感じながら回ると、旅がさらに深まります。博多ラーメンはキレの良さが魅力ですが、久留米ラーメンは“落ち着いた深み”があり、旅の締めに食べると、身体がふっと落ち着くような感覚があります。福岡旅行の中で、時間をつくってでも食べてほしい一杯です。
3. “ご当地B級グルメ”をもっと楽しむ旅のコツ
九州・沖縄を旅していると、料理そのものだけでなく、「どんな場面で食べるか」で味の印象が大きく変わることに気づきます。たとえば同じ料理でも、夜風の中で食べるのか、海を見ながら食べるのか、湯上がりに食べるのかで、驚くほど体験の質が変わります。
ここでは、旅のシーンごとに“その土地らしく味わうためのヒント”を少しだけ紹介します。
例えば、福岡の夜はやっぱり屋台から始まります。夕暮れの川沿いに灯りがともり、焼き鳥の香りが流れてくると、旅のスイッチが静かに入るような感覚があります。カウンター越しに飛び交う会話や、屋台特有の距離感の近さも、料理の一部。とり皮の香ばしさを頬張りながら、街の熱量をそのまま味わえるのは、福岡の屋台だからこそです。
朝〜昼にかけては、市場や商店街を歩くのがおすすめです。九州の市場はどこも活気があり、“生活の音”がそのまま聞こえてきます。食堂の暖簾をくぐれば、観光地では味わえない“日常の一皿”が出てくることも多く、旅の緊張がふっととけていきます。熊本の市場で温かいスープをすすったり、長崎の商店街で軽食をつまんだりすると、その土地で暮らす人々の生活が垣間見えるようです。
そして、特に印象が変わるのが“大分の湯上がりグルメ”。温泉で体が芯から温まった状態で食べるとり天や別府冷麺は、普段よりも驚くほど優しく感じられます。湯けむりの残り香とポン酢の爽やかさが重なる瞬間は、まさに“旅が身体で味わえる”体験です。
沖縄では、ぜひ移動しながら気軽に味わってみてください。タコライスやポークたまごおにぎりは、海辺のベンチでも、公園でも、車の中でも成立する自由さがあります。強い日差しや湿度の中でも食べやすいのは、沖縄ならでは。海風に吹かれながら一口かじると、その瞬間に“沖縄に来たんだ”という実感が胸に広がります。
九州・沖縄の食は、料理だけでなく“場面がセット”になってこそ真価を発揮します。旅の途中で、ふと気分の向くままに店に入り、その土地の空気ごと味わってみてください。きっと料理の記憶が、旅の記憶と一緒に深く刻まれるはずです。
4. 別府・大分グルメ旅の拠点に──源泉掛け流し『別府 豊泉荘』
旅は“どこに泊まるか”で、その日の過ごし方や食の選択肢が大きく変わります。今回ご紹介したエリアの中で、大分・別府へお越しの際に是非お勧めしたいのが『別府 豊泉荘』です。地元の美味しいグルメの食べ歩きを楽しんだあとに、“静かに体を休めることができる、街にも出やすい宿”。別府観光の最適な拠点となるでしょう。

別府 豊泉荘の一番の売りは、何と言っても“源泉掛け流しの天然温泉”です。日本を代表する有数の温泉地ならではの贅沢を、リーズナブルな価格で堪能できます。館内は落ち着いていて、部屋に入れば自然と肩の力が抜けるような静けさが広がり、温泉に入れば旅の疲れがふっとほどけていきます。客室は、広々とした『離れ TSUBAKIスイート』を含めて11趣もあるので、旅のスタイルに合わせてお好みで選べるのも嬉しいポイント。
また、JR別府駅から徒歩圏内にあるという好立地も外せないメリットです。宿泊プランには地元産の食材を活かした美味しい料理付きのプランもありますが、市内の飲食店へのアクセスが良い立地を生かして、とり天・別府冷麺・りゅうきゅう・地鶏など、“大分を象徴する味めぐり”をするにもうってつけの宿です。詳しくは公式サイトをご覧ください。
観光客で賑わう別府の街の中で、あえて“ふつうに休める宿”があるというのは、とてもありがたい存在です。別府観光を検討する際には『別府 豊泉荘』への宿泊を記憶に留めておいてください。ちなみに、当社が運営している「宿紹介ポータルサイト“お宿ねっと”」では、そのほかの地域のおすすめ宿を多数紹介しております。こちらも合わせてチェックしてみてください。
別府 豊泉荘 公式サイトはこちら
https://www.housensou.com/
5. まとめ:九州・沖縄は“軽やかで奥深い”旅の宝庫
九州・沖縄のB級グルメは、どれも“日常の中から生まれた味”。
だからこそ、旅の中で食べると心がほどけ、身体に馴染み、強く記憶に残ります。
屋台の灯り、商店街の匂い、海沿いの風、温泉街の湯気。
その土地の“空気ごと食べる体験”は、豪華な料理よりも旅の印象を深めてくれます。今回の10品は、どれも“その地域らしさ”がぎゅっと詰まった名物。
次の旅では、ぜひ九州・沖縄のローカルフードを巡ってみてください。
きっと、旅の満足度が何段階も上がるはずです。