SNS時代の集客戦略と運用改善のポイント

SNS時代の集客戦略と運用改善のポイント
SNS時代の集客戦略と運用改善のポイント

「うちはSNSに弱いから……」
「投稿しても、予約にはつながらない……」
このようにSNS運用に苦手意識を持つ宿泊施設はまだまだ多く存在します。しかし、今や宿泊施設にとってSNSは、単なる広報や流行ではなく、「収益に直結する販路」の一つとなりつつあります。本記事では、SNSを通じて宿泊施設が“選ばれる存在”になるための集客戦略と、その運用改善のヒントを徹底的に解説します。単なるフォロワー集めでは終わらない、収益性とブランディングを両立させるための本質的なSNS活用法を、成功事例や実践ノウハウを交えてお届けします。

《目 次》

  1. SNS運用は宿泊施設経営の“第二の販路”になる
  2. なぜ今、宿泊施設にSNSが必要とされているのか?
    2-① OTA依存からの脱却
    2-② ファン・フォロワーとの直接的な関係性
  3. SNS集客を強化するための戦略設計
    3-① ターゲットペルソナの設計
    3-② コンテンツカレンダーと年間投稿計画
  4. 成功に導く社内体制と外注判断
    4-① 内製でやるべきこと/外注に向いていること
    4-② SNS運用担当者に必要なスキル
  5. SNS運用を通じた“直販比率向上”の実例紹介
    5-① 直販予約比率40%超の宿泊施設での取り組み
  6. 運用改善に役立つツール・分析方法
  7. まとめ:SNSは“ブランド発信”と“収益”を両立する武器になる

1. SNS運用は宿泊施設経営の“第二の販路”になる

SNS運用は第二の販路になる

宿泊施設がSNS運用に注目すべき理由は、単なる「情報発信」や「写真投稿」の域を超えているからです。近年、宿泊業界ではOTA(Online Travel Agent)依存からの脱却が重要な経営課題となっており、それに代わる集客チャネルとしてSNSが急速に存在感を高めています。

直販比率を高める“もう一つの集客チャネル”

OTAを活用することで、ある程度の集客は担保されるものの、そこには常に手数料が発生します。手数料率は10〜15%、高いものでは20%を超えることも珍しくありません。このような状況下で、施設の魅力を直接ユーザーに届け、予約につなげる導線として、SNSが「第二の販路」として注目されているのです。

InstagramやLINE、YouTube、X(旧Twitter)といったSNSは、それぞれが異なるターゲット層に対して施設の魅力を届けることができ、特に自社HPへの導線や予約フォームとの連携によって「SNS→直販」への流れをつくることが可能です。

情報“蓄積型”のメディアに変わる価値

かつてのSNSは「瞬間拡散型」のメディアでしたが、現在では「蓄積型」の使い方も注目されています。Instagramのハイライトやピン固定、YouTubeのプレイリストなど、ユーザーが“いつでも見に行ける”コンテンツとして、SNSのアカウントが施設のもう一つのオウンドメディアのように機能するのです。

2. なぜ今、宿泊施設にSNSが必要とされているのか

SNSを活用した宿泊施設は、単に情報発信をしているだけではありません。実際には、SNSが宿泊施設の経営そのものに対して戦略的に寄与しているのです。ここでは、SNSがなぜこれほどまでに注目されているのか、その背景と本質を解説します。

2-① OTA依存からの脱却

OTAは確かに強力な販売チャネルです。多くの宿泊施設が「楽天トラベル」「じゃらんnet」「Booking.com」などを通じて安定した集客を得ています。しかし、その反面で、以下のような課題も生じています。

  • 高い手数料による利益圧迫
  • 同一エリア内での価格競争
  • 顧客との接点がOTAに依存してしまう

これらの課題を解決するために求められているのが「自前の集客力の確保」です。SNSはこの点において非常に強力な武器となります。

  • Instagram → ブランドイメージや視覚的訴求
  • LINE → ダイレクトな通知と囲い込み
  • YouTube → 宿泊体験の臨場感伝達
  • Facebook → 中高年層への信頼醸成

これらを活用することで、「価格」ではなく「体験価値」で選ばれる宿づくりが可能になります。

ファン・フォロワーとの直接的な関係性

2-② ファン・フォロワーとの直接的な関係性

SNSの本質的な強みは、「ユーザーとの接点を自分たちで持てること」です。たとえば、Instagramで投稿を見て「素敵」と思ったユーザーが、アカウントをフォローし、次の投稿を心待ちにするようになる。DMで質問し、そこに丁寧に返信が来る。その体験が「予約」に自然とつながっていくのです。

これはOTAには決してできないアプローチです。SNSは単なる広告媒体ではなく、関係性を築く場であり、そこにこそ、他の宿との差別化ポイントがあります。また、一度フォローした顧客とは、今後も継続的なコミュニケーションが可能です。リピーター促進やクーポン配布などの“囲い込み施策”にも応用できるため、LTV(ライフタイムバリュー)の最大化にも貢献します。

3. SNS集客を強化するための戦略設計

SNS運用を始める際、多くの宿泊施設が「とりあえず投稿してみる」スタイルで進めてしまいがちです。しかし、それでは効果が現れるまでに時間がかかり、結果として途中で手が止まってしまうという課題も多く見られます。

より成果につなげるためには、ある程度の方向性を持って運用を行うことが大切です。ここでは、SNS集客を強化するための戦略づくりについて、具体的な考え方や一例をご紹介します。

3-① ターゲットペルソナの設計

「誰に、何を、どのように届けたいのか」を明確にすることは、SNS運用を行ううえでとても大切なステップの一つです。伝えたい相手像が明確になることで、投稿の内容やトーンが整い、SNSの世界観が統一されていきます。

以下は、ターゲットペルソナを設定する際のイメージとして、2つの例を紹介します。

ターゲットペルソナ設計

例①:20代後半の女性/東京都在住/癒しや美容への感度が高い

  • SNS利用はInstagramが中心
  • 日常の疲れをリセットする「非日常体験」に惹かれやすい
  • 世界観のあるビジュアルや“映える”写真に敏感

例②:50代のご夫婦/地方都市在住/落ち着いた温泉旅行を好む

  • SNSはFacebookやLINEを主に使用
  • 静かで安心感のある旅を好む傾向
  • 料理や接客の丁寧さ、口コミの評価を重視する

このように、ターゲットとなるお客様の属性や価値観、SNSの利用傾向などを具体化してみると、「どの媒体で、どんな投稿をすると響きやすいか」が自然と見えてきます。

あくまで一つの例ですが、施設のタイプや立地によって、もっと幅広いペルソナが考えられるはずです。可能であれば、既存のお客様アンケートや過去の予約データなどを参考にしながら、現実に即した人物像をチームで共有すると、SNS施策の方針がぶれにくくなります。

3-② コンテンツカレンダーと年間投稿計画

SNSを継続的に運用していくには、あらかじめ投稿内容をある程度設計しておくことが有効です。特に多忙なシーズンには投稿が止まりがちになってしまうため、あらかじめ「いつ・何を・どんな形式で」発信するかをざっくりとでも計画しておくと、運用の負担を抑えることができます。

以下は、年間を通じたコンテンツの一例です。施設の立地やコンセプトに合わせて、柔軟にカスタマイズしながら使ってみるとよいでしょう。

季節イベント投稿テーマの例投稿形式の例
1月初詣・新春・おせち付きプラン紹介
・元旦の朝食風景
写真+キャンペーン告知
3月桜の時期・桜スポットの開花情報
・女子旅プラン紹介
ストーリーズ+短尺動画
7月夏休み・ファミリープラン
・子ども向け施設紹介
宿泊体験のスライド投稿
10月紅葉・周辺紅葉マップ
・秋限定メニュー
写真+料理解説キャプション

このように、季節ごとのイベントや地域の話題に沿って、年間の投稿内容を計画しておくことで、投稿のネタ切れも防げます。

とはいえ、あくまでこれは一例にすぎません。実際には、フォロワーの反応を見ながら柔軟に調整したり、施設独自のイベントに合わせてオリジナルのカレンダーを作るのも良い方法です。

投稿頻度やタイミングについても、「週2回」「○曜日の午後に更新」など一定のリズムを持たせると、ユーザーの習慣にもなりやすく、エンゲージメント向上にもつながります。

4. 成功に導く社内体制と外注判断

4-① 内製でやるべきこと/外注に向いていること

運用リソースの状況によって判断は分かれますが、一般的には以下のような切り分けが参考になります。

項目内製向き(施設スタッフでも可能)外注に適したケース
写真・動画撮影スマホでの日常的な撮影や現場の空気感を伝えるシーンプロモーション用の高品質素材が必要な場合
投稿文作成現場の声を反映しやすく、リアルな視点が活きるブランドコピーの統一や大量投稿が必要な場合
コメント・DM対応顧客対応の延長として自然にできるフォロワー数が多く対応件数が多い場合
KPI管理・分析定点観測ができる体制が整っていれば◎専門知識が必要、月次レポートを求められるとき

「自分たちの手でやった方がいいこと」と「外注した方が効率的なこと」を仕分けすることで、SNS運用の負担を無理なく分散できます。

社内体制と外注判断

4-② SNS運用担当者に必要なスキル

社内でSNSを運用する場合、「誰が担当するか」は非常に重要なポイントです。広報担当者やフロントスタッフが兼務するケースも多いですが、SNSには特有の感性や技術も求められます。

担当者に求められる主なスキル・素養は以下のようなものです。

  • スマホ撮影スキル:構図や光の使い方、被写体選び
  • 伝える力(ライティング力):短い文章でも魅力が伝わる表現
  • マーケティング的な視点:どんな投稿が反応されやすいかを考える力
  • タイムマネジメント力:計画的に更新・運用ができるか
  • 共感力・対話力:コメントやDMへの返信にあたたかさが出せるか

完璧である必要はありませんが、最低限の知識や感覚がある人を選ぶと運用が安定しやすくなります。

5. SNS運用を通じた“直販比率向上”の実例紹介

SNSが“ただの告知ツール”ではなく、実際の売上向上や予約比率の改善につながった事例は、年々増えています。ここでは、ある温泉旅館の取り組みをもとに、具体的な施策と成果をご紹介します。

5-① 直販予約比率40%超の宿泊施設での取り組み

当社が運営している宿泊施設では、InstagramとLINEを中心にSNS運用を強化した結果、2年間で直販予約比率を20%台→40%超にまで改善した施設がいくつもあります。中には『直販予約率56%』という施設もあるほどです。

取り組み内容はシンプルですが、地道な積み重ねが功を奏した好例です。

SNS投稿や直販予約の説明をしているイメージ

施策①:Instagramでの世界観づくりと定期投稿

  • 客室や天然温泉の大浴場、料理の“静かで美しい”ビジュアルを統一したトーンで発信
  • 週2回、火・木の午後に投稿を固定化
  • ハッシュタグは地域名+テーマ(#〇〇温泉 #記念日旅行 など)を継続使用

施策②:LINE公式アカウントでリピーター促進

  • フォロワー限定で“割引クーポン”を配布
  • 季節ごとの特別メニューやイベント情報を1ヶ月ごとに配信
  • チャット対応で柔軟に問い合わせを受け付け

施策③:InstagramのDMと予約フォームを連携

  • 投稿から施設公式サイトの自社予約フォームへのリンクを明記
  • DMで問い合わせを受け、予約動線をサポートするオペレーションを整備

このような一連の取り組みが、集客だけでなく顧客との関係性の深まりにもつながり、結果として“安売りせずに売上を伸ばす”ことが可能になったのです。

当社、エムアンドエムサービスは会社設立以前から全国各地の宿泊施設の運営を手掛けてきており、すでに200施設を超える実績と経験を豊富に蓄えております。宿泊施設の集客でお悩みのオーナー様は、是非一度、お気軽にご相談ください。

6. 運用改善に役立つツール・分析方法

SNSは「投稿して終わり」ではありません。投稿の反応を見て改善したり、数字をもとに判断することが、次の成果へとつながります。ここでは、宿泊施設がSNS運用のPDCAを回すうえで役立つツールや指標をご紹介します。

運用状況の改善や数値検証イメージ

運用に使える無料&低コストツール

ツール名概要用途の例
Meta Business SuiteInstagramとFacebookを一括管理投稿予約/インサイト分析/コメント対応 など
LINE公式アカウントマネージャーLINE配信と統計ができる公式ツールクーポン配信/読者数の分析/アンケート実施 など
Canva無料で使えるデザインツール投稿用バナー/ストーリー素材/イベント告知 など
ChatGPTアイデア出し・投稿文の草案テーマ提案/キャンペーン案の整理/キャプション生成 など

これらはあくまでも一例で、他にも同様の便利なツールは多数あります。それらを活用することで、SNSの運用業務を効率化しつつ、成果に直結する改善を重ねることが可能になりますので検討してみてはいかがでしょうか。

また、SNSは「フォロワー数」が注目されがちですが、それだけで成果を測るのは危険です。以下のような指標も組み合わせてチェックすることをおすすめします。

見るべき指標(KPI)の例

  • 投稿ごとのリーチ数/保存数/クリック数
  • アカウント全体のエンゲージメント率(いいね・コメント)
  • 自社サイトへのSNS経由流入数
  • SNS経由の直販予約数(UTMや予約ページ遷移数などで計測)
  • LINEのブロック率/友だち追加率

様々な数値をもとに仮説を立て、トライ&エラーを繰り返すことが、SNSを“感覚ではなく戦略で活用する”ための第一歩です。もし運用にご不安があるようならば、実績のある外部の会社へ相談されることをお勧めいたします。既にご紹介しました通り、当社ではSNSの活用で自社予約率を大幅に向上させた実績もありますし、当社の「ホテル・旅館 伴走型コンサルティング事業(バリュークリエーション)」では、自社のWebマーケティングチームによる効果的な販促施策でオーナー様の施設の集客を全面的にサポートさせていただきます。是非、お気軽にご相談ください。

7. まとめ:SNSは“ブランド発信”と“収益”を両立する武器になる

これまでご紹介してきた通り、SNSは単なる広報ツールではありません。宿泊施設にとって、今やSNSは「集客チャネルの一部」であり、「顧客との接点づくりの主戦場」とも言える重要な領域になっています。

特に以下のような効果が、現場にとって現実的なメリットとして実感されています。

  • OTA依存を減らし、直販比率を高められる
  • フォロワーやリピーターとの関係性を深められる
  • 施設の魅力を「価格」ではなく「体験価値」で伝えられる
  • 宿泊以外(地域体験や物販など)の販路展開も広げられる

SNS運用は、始めたばかりの頃こそ手応えを感じにくいものですが、「発信→反応→改善」のサイクルを回していくことで、確実に“資産”となっていきます。大切なのは、完璧な投稿よりも、等身大の施設の魅力を少しずつ伝えていくことです。

また、運用体制を見直すことで、スタッフの関与度が高まり、チーム内のコミュニケーション活性化にもつながることがあります。SNSは外に向けたツールであると同時に、「施設のブランドを自ら考え、表現するための内側からの変革装置」でもあるのです。

はじめの一歩としてできること

  • まずは週に1回の投稿を目標に、現場の日常を発信する
  • 簡単なペルソナ設計カレンダーを作成して、方向性を明確にする
  • フォロワーの反応を見ながら、少しずつ改善する
  • 必要に応じて、撮影・分析などを部分的に外注してみる

今後ますます、宿泊施設同士の“価格競争”ではなく、“世界観競争”が進むと予想されます。そんな時代に選ばれる施設とは、SNSを通じて自分たちの価値を発信し、「共感される存在」として顧客との関係性を築けている施設です。SNSは手間のかかる取り組みでもありますが、ていねいに運用を重ねるほどに、他にはない大きな差別化ポイントにもなります。「伝えること」そのものが、施設の価値を育てる──
そのことを念頭に、できるところから一歩ずつ踏み出してみてはいかがでしょうか。

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